グリーンインフラの取り組み事例と対応製品

グリーンインフラとは、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方です。前田工繊では、自然環境の保全・再生と、社会課題の解決のため、経営理念に掲げる「持続可能な地球」「安心・安全で豊かな社会」をキーワードに、グリーンインフラの考え方にマッチした様々な製品を提供しております。

Contents

グリーンインフラとは

日本におけるグリーンインフラ

グリーンインフラとは、自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方で、日本では平成27年度に閣議決定された国土形成計画および第4次社会資本整備重点計画において「国土の適切な管理」「安全・安心で持続可能な国土」「人口減少・高齢化等に対応した持続可能な地域社会の形成」といった課題への対応のひとつとして、グリーンインフラの取組を推進することが盛り込まれました。

以後、国土交通省を中心に、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能(生物の生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制等)を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるグリーンインフラに関する取組が推進されてきました。従来のコンクリートを使ったインフラはグリーンインフラに対して「グレーインフラ」と呼ばれます。

また、自然環境が有する多様な機能を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるグリーンインフラの推進は、SDGsの目標達成にも貢献するものと期待されています。

グリーンインフラの循環イメージ

グリーンインフラの定義

国土交通省では、グリーンインフラを以下のように定義しています(国土交通省「グリーンインフラストラクチャー~人と自然環境のより良い関係を目指して~」平成29年3月)。

  • 「グリーンインフラ」とは、社会資本整備や土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能(生物の生息の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制等)を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるもの。
  • 従って、自然環境への配慮を行いつつ、自然環境に巧みに関与、デザインすることで、自然環境が有する機能を引き出し、地域課題に対応することを目的とした社会資本整備や土地利用は、概ね、グリーンインフラの趣旨に合致する。
  • これらの取組は、河川、海岸、都市、雨水貯留浸透、道路、国土管理等既往の社会資本整備や土地利用に多く見られることから、こういった取組を「グリーンインフラ」と呼称するか否かは、当面重要ではなく、かかる取組の推進により自然環境が有する機能を引き出し、地域課題に対応していくことを通して、持続可能な社会や自然共生社会の実現、国土の適切な管理、質の高いインフラ投資に貢献するという考え方が重要。

グリーンインフラの効果と取り組み事例

グリーンインフラにはさまざまな効果が期待されていますが、主に「防災・減災」「地域振興」「環境保全」の3つの側面からその効果を考えることができます。それぞれでどのような取り組みが行われているのかを国土交通省の資料をもとにご紹介します(参考:国土交通省「グリーンインフラストラクチャー(取組等の事例)」)。

防災・減災とグリーンインフラ

世界的に自然災害の対策が求められているなか、地域の持続可能な開発や自然環境保全に対する関心の高まりを背景に、生態系が有する機能を生かした防災・減災(Ecosystem based Disaster Risk Reduction: Eco-DRR)が国際的に注目を集めています。Eco-DRRの基本的な考え方は、生態系により危険な自然現象を軽減し社会の脆弱性を低減することと、自然状態の土地利用を維持することを通じて自然現象に曝されることを回避することにより、自然災害リスクを下げることです。

たとえばクロマツ林やマングローブ林などの海岸林が津波エネルギーを減衰させることや、植生を回復させることで、土壌侵食を軽減することなどが挙げられます。また、洪水の起こるリスクの高いところを湿地として保全することや、土砂災害の起こるリスクの高い急斜面やその直下では開発を避け、自然状態のままとすることなどが挙げられます。

具体的な取り組み事例としては「緑の防潮堤」があります。これは津波が堤防を越えた場合に堤防が壊れるまでの時間を遅らせることで、避難時間を稼ぐとともに、浸水面積を減らすなどの減災効果がある粘り強い構造の海岸堤防となります。整備にあたっては用地や地形などの成約があるなかで、地元の移行や整備効果を考えながら整備場所を選ぶ必要があります。課題としては樹種や生育状況、管理状況によって、効果が一定にならないということが考えられます。このため、比較的発生頻度の高い津波に対しては、コンクリートの堤防で安全を確保する必要があります。

岐阜県多治見市では、高度成長期以降の宅地開発により土砂災害の危険性が増大、大雨が降るたびに庄内川の支川で氾濫が繰り返し発生していました。そこで砂防に加え、隣接する山麓斜面を一連の緑地帯(グリーンベルト)として、行政(市・県・国)と地域(住民・中学生)が連携して保全・創出することにより、土砂災害を防止し、自然環境・景観を保全することを目的としたグリーンベルト事業を推進しています。

環境保全とグリーンインフラ

兵庫県の但馬地域では、コウノトリの野生復帰を目的とし、過去に損なわれた湿地や環境遷移帯等の良好な河川環境の再生を目指しています。河川を軸とした生態系ネットワーク形成の取組を進めるなかで、コウノトリの野生復帰のみならず、ブランド米による農家所得向上、エコツーリズムによる経済効果など、さまざまな波及効果が現れているそうです。

コウノトリ

宮崎県の日向灘沿岸では、延長約10kmの砂浜海岸で、アカウミガメなど貴重な野生生物が生息していますが、この40年で土砂の収支バランスが崩れ、一部の砂浜がなくなってしまいました。そこで市では市民や学識者らと検討し、砂浜へ砂を投入、さらに砂を捕捉する突堤に加えて、自然の堤防である背後砂丘を保全するための埋没護岸を整備、コンクリート構造物をできるだけ使わず、景観や環境を保全する観点から護岸に海水と砂を混ぜて袋詰めしたサンドパックを護岸材に使用しました。

宮崎海岸

地域振興とグリーンインフラ

地域振興としては「都市公園」があります。都市公園は、屋外での自然とのふれあいや、集団のなかで身体を動かす遊びの場を提供することで、子供の健全な発育を促します。また、多様な行事の実施などによる交流・連携の機会を提供し、コミュニティの活性化に寄与する効果が期待できます(参考:国土交通省「都市公園のストック効果向上に向けた手引き」)。

公園名称 地域 内容
佐久総合運動公園 長野県佐久市 競技場やマレットゴルフ場の整備等により、子どもから高齢者まで幅広い年代の住民に対してスポーツに親しむ機会を提供
金ヶ崎公園 兵庫県明石市 小高い丘陵地にある公園が四季の自然を感じ、適度なハイキングが楽しめる場として心身のリフレッシュや高齢者の健康増進に寄与
服部緑地 大阪府豊中市 自然に囲まれた公園内でガーデンヨガやウォーキングなどの運動機会を提供することで健康づくりに寄与
竜田古道の里公園 大阪府柏原市 一般廃棄物の最終処分場跡地を公園整備。花見やバーベキューなど、多くの来訪者が訪れる憩いの場を提供
こどもの森 東京都練馬区 子ども達が創造力を働かせて次々と新しい遊びを生み出せる場を提供する事で、子ども達の健全な発育に寄与
烏川渓谷緑地 長野県安曇野市 渓谷の自然を守り、活かした本公園では市内小学校の環境学習会を開催。多くの子供たちに体験型環境学習の場を提供
帯広の森 北海道帯広市 延べ約15万人の市民の手によって約24万本の樹木が行われた公園内では市民団体による森づくり活動が市民の交流を促進
箕面公園 大阪府箕面市 豊かな自然環境を活かした多彩なイベントの開催を、NPO・市民団体による協働のネットワークの構築により実現

グリーンインフラの課題と問題点

整備・維持管理にかかるコスト

どのようなインフラでも整備にはコストがかかります。自然を活用するというと一般的には安価にできそうなイメージがありますが、実際には従来のコンクリートをグレーインフラのほうが費用を抑えることができます。さらにグリーンインフラは植物の成長もあるためメンテナンスにかかる費用がかかることも大きな課題です。

グレーインフラとのバランス

防災・減災での活用では、あまりグリーンインフラに頼りすぎると、十分な効果が得られないことも考えられます。住民の安全にかかわる整備については、安全性をよく考えたうえで整備を行う必要があります。つまりグリーンインフラとグレーインフラとのバランスが重要になります。

横断的な取り組みができるか

グリーンインフラの整備にあたっては、行政、企業、地域住民、市民団体、研究機関などさまざまな人たちの参画が求められ、またそれらの人たちをまとめる人材も必要となります。さらに日本の縦割り行政では、横断的な取り組みが難しいという課題もあります。

前田工繊のグリーンインフラ製品

前田工繊では、経営理念に掲げる「持続可能な地球」「安心・安全で豊かな社会」をキーワードに、グリーンインフラの考え方にマッチした様々な製品を提供しております。

浜崖後退抑止工「シーガーディアン®」

砂浜は日本の重要な国土であることはもちろん、津波や塩害・飛砂から背後の集落を守る自然の防災施設としての役割も担っています。しかし、高波浪の襲来などにより砂浜が侵食され、浜崖の形成・後退は年々深刻化しています。
当社では、この海岸侵食被害への対策として、浜崖の前面にサンドパックを設置し、浜崖基部を保護する「浜崖後退抑止工」用サンドパックを国土交通省国土技術政策総合研究所との共同研究により開発いたしました。また、本工法では中詰め材料に現地の海岸材・養浜材を使用することで、生態系への影響も軽減しています。

「シーガーディアン」を詳しく見る

この製品が貢献するSDGs目標

護岸工「リバデム工法」

リバデム工法は、当社の補強土工法のノウハウを活かし、土とジオグリッドを用いて急勾配の護岸を構築する工法です。
従来のコンクリート系護岸や石系護岸とは異なり、現地発生土を用いることで自然生態系の復元・創出が可能となります。また、河川護岸の緑化を促進し、二酸化炭素の削減など環境負荷の低減にも効果が期待できます。

「リバデム工法」を詳しく見る

貢献するSDGs目標6 安全な水とトイレを世界中に 15 陸の豊かさも守ろう

袋型根固め工法用袋材「ボトルユニット」「パワフルユニット」

ボトルユニット・パワフルユニットは河川や海岸護岸の根固めに用いられる材料です。繊維製のネット袋に自然石を入れたもので、根固工に要求される河床変動への追従性や、地盤凹凸へのなじみをあわせもつ材料です。施工性が良いことから、災害復旧の現場においても幅広い用途で使用されています。
自然石を用いることで多自然川づくりに寄与し、袋間や、袋内の自然石間の空隙により、水生生物の生育環境が創出されます。
また、パワフルユニットは洋上風力発電の着床式基礎の洗堀防止工としても期待されています。 → 洋上風力発電施設における活用についての詳細

「ボトルユニット」を詳しく見る 「パワフルユニット」を詳しく見る

貢献するSDGs目標7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに 

鉄芯木製法枠「ネイチャーフレーム」/鉄芯木篭「モクカゴ」

地球温暖化対策をはじめ、健全で多面的な機能を発揮する森林を生育するためには間伐が必要不可欠です。ネイチャーフレーム・モクカゴは、地元で出た間伐材を使用した製品であり、加工についても近隣の業者で行っているため、資源の生産から加工、消費までを地元で循環させる「産消協働」の推進にも寄与しています(詳細)。
本製品は、木材の芯部にボルトを通す鉄芯工法を採用しており、それぞれの部材を全ネジボルト・角ワッシャー・ナットで固定するため、従来の木製品の課題であった連結部(交点部)の強度を向上させたことが特長です。また、部材はすべてパネル化されているため、施工性にも優れています。さらに、木が主材料であるため周辺環境によくなじみ、公園や山の中など景観配慮が必要な場所でも景観を損なうことなく法面の侵食防止対策(ネイチャーフレーム)や護岸工・谷止工・床固工等(モクカゴ)が可能です。

「ネイチャーフレーム」を詳しく見る 「モクカゴ」を詳しく見る

貢献するSDGs目標11 住み続けられるまちづくりを 13 気候変動に具体的な対策を 15 陸の豊かさも守ろう

藤棚

藤のつるをからませれば、自然の力で日差しをやわらげる効果も高まり、心地よい涼風を感じながらのコミュニケーションを楽しむことができます。また、植物の少ない空間への緑化にも貢献し、公園や庭園の憩いの場には、見逃せないアイテムです。
前田工繊では、天然木のテスクチャーとプラスチックの耐久性・軽量性を併せ持つ「プラ擬木」を用いた藤棚をご提案しています。

「藤棚」を詳しく見る

貢献するSDGs目標11 住み続けられるまちづくりを 13 気候変動に具体的な対策を 15 陸の豊かさも守ろう

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