開発の背景および開発内容要旨
【吸い出し・陥没を抑止するケーソン目地透過波低減法(ネットバッファ工法)の開発】
護岸・岸壁・人工海浜等の陥没はかねてから全国各地で発生しており、近年も数多くの被災事例が報告されています。これらの陥没は、ケーソン(防波堤や岸壁をつくる際に使用される鉄筋コンクリートでつくられた大きな箱)間を透過する波の繰り返し作用を主要因として、埋立土砂の吸い出しが生じ、これに伴う空洞が地中で生成・発達することによって、突然発生します。
従来、透過波対策として、種々の遮断材が検討・施工されてきましたが、高波浪の衝撃や地震等によるケーソン移動によって機能損失が生じることに加え、再設置では施工困難な状況も多く、時間・費用的制約が少なくないという課題がありました。
今回開発した本技術は、このような吸い出し・陥没を引き起こす透過外力を、繊維製網状の緩衝材をケーソン間の目地部に挿入することによって80%以上低減することで、護岸・岸壁・人工海浜の陥没リスクを大幅に抑制することを可能にした新技術です。
本技術は、従来工法の課題を解決すると共に、全国のケーソン施設へ適応可能であり、従前に比べて大幅にコスト・工期を縮減し、かつ、新設・既設・老朽化施設の予防保全・災害復旧・長寿命化対策として、地震や高波浪等の多様な外力作用下で安定的に吸い出し・陥没を抑止することができ、既に3つの重要港湾および国際戦略港湾を含む多くの現場で実用化され,その有効性が実証されています。
本技術によって、護岸・岸壁・人工海浜の陥没の抑止、人命の安全性および施設の信頼性の向上、さらには防災減災と長寿命化に大きく貢献することから、土木学会技術開発賞に値するものとして、今回の受賞に至りました。
ケーソン目地透過波低減法の概念図
●開発技術の特徴
・護岸・岸壁・人工海浜の陥没リスクを大幅に抑制することを可能にした新技術
・従来工法では、高波浪等によるケーソンの移動により遮断材が機能を失うなどの課題があったが、本技術では当問題を解決し、設置安定性も発揮
・多様なケーソン目地間隔、水底堆積物、既存抑止工等に対応し、老朽化施設を含む全国の護岸・岸壁・人工海浜へ適応可能
・大掛かりな工事の不要、従前に比べて大幅なコスト・工期の縮減、及び耐久性、耐候性、安全性の担保
●開発技術の効果
・陥没を引き起こす透過外力を80%以上低減することで護岸・岸壁等の吸い出し・陥没リスクを大幅に抑制
・従来対策と比較すると、大規模な工事が不要で、コスト・工期ともに10分の1に縮減
●技術の社会的意義及び発展性
・人命の安全性及び施設の信頼性が大きく向上
・全国の老朽化施設を含むケーソン護岸・岸壁・人工海浜の長寿命化
・発展途上国・先進国を含む同様の問題を有する現場への適用・展開
【ネットバッファ工法 紹介動画】
受賞理由 ※選考委員会授賞理由書より抜粋
本技術は、従来工法の課題を解決すると共に、全国のケーソン施設へ適応可能であり、従前に比べて大幅にコスト・工期を縮減し、かつ、新設・既設・老朽化施設の予防保全・災害復旧・⾧寿命化対策として、地震や高波浪等の多様な外力作用下で安定的に吸い出し・陥没を抑止することができ、既に3つの重要港湾および国際戦略港湾を含む多くの現場で実用化され,その有効性が実証されている。
本技術によって、護岸・岸壁・人工海浜の陥没の抑止、人命の安全性および施設の信頼性の向上、さらには防災減災と⾧寿命化に大きく貢献するため、土木学会技術開発賞に値するものである。
計画、設計、施工、または維持管理等において、創意工夫に富むと認められる技術(情報技術、マネジメント技術を含む)を開発、実用化し、土木技術の発展を通じて、社会に貢献したと認められる者に贈られます。