経営方針
株主・投資家の皆様へ

 株主の皆様には、平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。

 ここに、当社第52期連結会計年度(2023年7月1日から2024年6月30日まで)の業績についてご報告申し上げます。

当連結会計年度の概況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、経済社会活動が正常化に向かい、個人消費やインバウンド需要の回復により企業収益が改善し、緩やかな景気回復が続きました。一方で、ウクライナ・中東情勢の地政学リスクに伴う原材料・エネルギー価格の高騰や、米国におけるインフレに伴うFRBの利上げなど、世界的な金融引き締めに伴う急激な為替変動や物価高騰等を背景に、国内景気は不安定な状態が続いております。

 このような状況のなか、当社グループでは、2018年の創業100周年を機に、企業メッセージ「前田工繊は混ぜる会社です」を掲げております。このメッセージには、当社グループが持続的成長を遂げるための強い思いを込めており、グループの持つあらゆる経営資源を「混ぜる」ことで、成長戦略である「M&A」、「海外事業の展開」、「人材育成」を積極的に推進するための原動力になると考えております。

 M&A戦略においては、当社グループがこれまで培ってきた繊維・樹脂の加工技術に捉われず、異分野がもつ様々な技術やノウハウを「混ぜる」ことで、新製品や新技術を創出してまいります。海外事業においては、海外拠点の生産能力を拡充するとともに、外国籍企業との業務提携等を通じて国内外の技術や販売ネットワークを活用することで、当社グループ製品の市場拡大を目指してまいります。

 人材育成においては、当社グループ社員全員を戦力化するほか、多様な人材を採用・育成し、それらの能力・経験から生まれる人的資源を「混ぜる」ことで、イノベーティブな組織風土を築いてまいります。また、当社グループでは、「従業員の健康が会社の未来を決める」との考え方のもと、すべての従業員の心と体の健康づくりに深く関わっていくことを決意し、「健康宣言」を行っております。今後も健康で働きがいのある職場づくりに向けた様々な施策に取り組んでまいります。
なお、当社グループの人材育成に関する施策については、当社ホームページをご参照ください。https://www.maedakosen.jp/sustainability/esh/

 当社グループでは、上記成長戦略の具現化に向け、新たな中期経営計画となるグローバルビジョン∞「PARTⅡ」(2024年度~2027年度)を策定しております。

2023年6月期
(実績)
2024年6月期
(実績)
2025年6月期
(計画)
2027年6月期
(計画)
売上高 50,204 55,833 60,000 70,000
営業利益 8,493 10,736 11,200 12,000
EBITDA 11,682 14,106 14,500 15,000
親会社株主に帰属する
当期純利益
5,258 7,979 7,700 8,000

 PARTⅡでは、当社グループ事業における成長分野への投資として、4か年で約150億円の設備投資を計画しており、旺盛な需要に対応した生産能力の増強や、生産ラインの自動化・省力化を進めてまいります。また、M&Aについては、4か年で約200億円の投資枠を設定し、既存事業とのシナジーや事業領域の拡大を狙った案件をターゲットに成長を加速させてまいります。さらに、当社グループ事業のグローバル展開として、2027年6月期の当社グループにおける海外売上比率を30%まで引き上げることを目標としております。
 このように、当社グループは、モノづくりを通じて、「私たちは 独自の知恵と技術で 持続可能な地球 そして安心・安全で豊かな社会を創るために 貢献してまいります。」という経営理念を実践し、さらに世の中から必要とされる企業となるよう努力してまいります。

 当連結会計年度の売上高は55,833百万円(前年同期比11.2%増)となりました。利益面におきましては、営業利益は10,736百万円(同26.4%増)、経常利益は11,236百万円(同29.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,979百万円(同51.8%増)となりました。

セグメントの業績

ソーシャルインフラ事業

 当社の公共工事事業は、盛土補強材において一部案件の納入遅れが生じた一方で、河川護岸材、海洋土木製品、斜面緑化製品、コンクリート構造物の補修・補強用資材の販売が堅調に推移しました。利益面においては、製造原価の削減を進めたことに加え、原材料価格の高騰に対応した販売価格への転嫁も徐々に進んだことから、好調に推移しました。不織布関連の製品は、スパンボンド(連続長繊維不織布)の産業資材・自動車資材向け販売が伸び悩んだほか、マスク等の医療・衛生資材の受注が落ち込んだ結果、売上・利益とも計画に対して厳しい結果となりました。

 獣害対策製品、園芸用ハウス、農業資材を取り扱う子会社の未来のアグリ株式会社においては、獣害対策製品の受注は堅調に推移したものの、園芸用ハウスや酪農用製品などの農業資材の受注が伸び悩んだことにより、売上・利益とも低調に推移しました。また、天幕や帆布生地製品を取り扱う子会社の未来テクノ株式会社では、防衛省向け製品の販売が順調に回復したほか、一部大型案件の受注や海洋土木製品の販売拡大が奏功したことから、好調な結果となりました。海外子会社であるMAEDA KOSEN VIETNAM CO., LTD.においては、下期に製品の販売量が減少たものの、製造原価の削減効果により、利益は計画に対して順調に推移しました。

 以上の結果、当事業の売上高は31,687百万円、営業利益は6,755百万円となりました。

インダストリーインフラ事業

 自動車ホイール事業については、鍛造ホイールを製造・販売する子会社のBBSジャパン株式会社において、自動車メーカー向けOEM供給やアフター市場向け製品が好調に推移したほか、同社のドイツ子会社BBS Motorsport GmbHの業績が大きく伸長した結果、前年同期と比べ売上が伸長し、利益は大幅に上回る結果となりました。

 精密機器製造用ワイピングクロス、衣料・各種産業資材用の丸編製品を製造・加工・販売する子会社の未来コーセン株式会社においては、電力料や仕入れ価格の高騰によるコスト増加の影響があったものの、ワイピングクロスの売上が回復傾向にあることから、売上・利益とも堅調に推移しました。

 以上の結果、当事業の売上高は24,145百万円、営業利益は5,101百万円となりました。

 株主の皆様におかれましては、今後ともなお一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

2024年8月